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SPIN話法の質問例|4種の質問を場面別に使い分ける実践ガイド

SPIN話法の4種の質問(状況・問題・示唆・解決)について、そのまま使える質問例と自社商材への変換方法を解説。初回商談・既存深耕・インサイドセールスなど場面別の質問数配分、尋問化を防ぐ会話設計、チーム評価の観点も紹介。

読了時間:約14分
営業戦略
著者

NSJAPAN編集部

株式会社NSJAPAN メディア編集部

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SPIN話法の質問例|4種の質問を場面別に使い分ける実践ガイド

「SPIN話法の質問例が知りたい」という問いに対する答えを先に示します。状況質問(S)は「現在、〇〇の業務はどのような体制で進められていますか」のように事前に調べられない事実だけを2〜3問。問題質問(P)は「お困りではありませんか」ではなく「その業務プロセスの中で、特に時間がかかっていると感じる点はどこですか」と対応方法や程度を聞く形にします。示唆質問(I)は「その状態が続くと、どこに影響が出そうですか」と影響の波及先を顧客に語らせ、解決質問(N)は「その問題が解消できたら、業務の何が変わりますか」と解決後の価値を顧客の言葉で言語化してもらいます。この4文をそのまま持ち帰れば、次の商談で最低限は機能します。

ただし、質問例を並べただけでは商談は動きません。同じ質問文でも、順番・質問数・受け止め方が崩れれば「尋問」になり、整えば「ヒアリング」になります。失敗要因として指摘されやすいのは、調べれば分かることを状況質問で聞きすぎること、そして質問を投げっぱなしにして要約を挟まないことです。本記事では質問例と同時に、どの商談場面で何問使い、どう受け止めるかまでを設計します。なお本文中の質問例は編集部が実務観点で作成したモデルケースであり、特定顧客の商談記録ではありません。SPINの定義・出典に関わる事実と、編集部による設計提案は区別して記述します。

この記事でわかること

  • 状況・問題・示唆・解決の4質問について、そのまま使える質問例と自社商材版へ変換する作り方
  • 新規開拓・既存深耕・インサイドセールス・訪問商談という場面別の質問数配分と質問セット
  • ヒアリングが尋問化する原因と、要約・前置き・間の取り方による具体的な直し方
  • 示唆質問が作れないときの「影響5方向」フレームと、顧客が沈黙したときの切り返し
  • SPINを個人技で終わらせず、チームのヒアリング品質として揃えるための評価観点

まず結論|SPIN話法の質問例4種と「そのまま使える型」

SPIN話法は、状況(Situation)→問題(Problem)→示唆(Implication)→解決(Need-payoff)の順に質問し、顧客自身に課題と解決価値を語らせるヒアリングの枠組みです。行動心理学者ニール・ラッカム氏が商談調査をもとに体系化し、1988年の著書『SPIN Selling』で広く知られるようになりました。質問例は文言を暗記するより「変数」で覚えたほうが転用が速く、次の4変数に自社商材を代入すれば質問文は組み立てられます。

  • S=体制・ツール・件数・期間などの事実
  • P=ボトルネックの所在(どの工程で、どの程度)
  • I=影響の波及先(時間・コスト・他部署・顧客・リスク)
  • N=解決後の変化(顧客の言葉で語られる価値)

この4段階が有効とされるのは、多くの顧客が自分のニーズを正確に認識していないためです。商談で語られるのは表面化した顕在ニーズであることが多く、その裏に本人も気づいていない潜在ニーズが隠れている場合があります。営業側が説明で気づかせようとするほど押し売りの印象が強まりやすく、質問で顧客自身に語らせれば、同じ内容でも受け止め方が変わります。SPINで4種の質問を終えてから商品説明に入るのが基本形とされているのも、この順序があってはじめて説明が受け入れられやすくなるためです。

数値の扱いについて:提唱者名と書籍名・刊行年は複数の解説記事で共通していますが、体系化の根拠となった商談の分析件数は媒体によって記載が異なります。本記事執筆時点で一次的に確認できないため、件数の数値は用いず「商談調査に基づく手法」とだけ記述します。

質問を採用するかどうかは「その回答が次の質問につながるか」で判断します。回答を得ても次に接続しない質問は、どれだけ丁寧に作っても情報収集のための情報収集にしかなりません。自社商材版を作る手順は次のとおりです。

  1. 自社商材が解ける課題を1〜3つに絞って書き出す
  2. その課題が発生している業務プロセスを特定し、状況質問の対象にする
  3. 課題の症状を問題質問、影響の波及先を示唆質問、解消後の状態を解決質問に変換する
  4. 作った質問を並べ、回答が次の質問に接続しないものを削る

この作業を30〜60分行えば、S2問・P3問・I3問・N2問程度の自社版リストは作れます。逆に、定義解説だけを読んで自社変換をしないまま商談に臨むと、4質問を全部聞くこと自体が目的化し、顧客より営業の発話量が多くなるという典型的な失敗に陥りやすくなります。なお、すでにRFPや要件が固まっているコンペ案件では、SとPを最小化し、IとNおよび条件確認に比重を移すのが現実的です。

判断ポイント

質問例は暗記対象ではなく変換対象。自社商材で解ける課題を起点に、S・P・I・Nの4変数へ落とし込めているかどうかが、商談で使えるかどうかの分かれ目になります。

状況質問(S)の質問例と、聞きすぎを防ぐ絞り込み基準

状況質問は情報収集そのものが目的ではなく、問題質問と示唆質問への助走です。事前に調べられることを聞いた時点で準備不足の印象を与え、尋問化の起点になります。編集部の設計目安としては、原則2〜3問、商談時間の15%以内に収めることを推奨します。

そのまま使える状況質問の例(体制/ツール/量/期間)

状況質問は、体制(誰が何人で)、ツール(何を使って)、量(どれくらいの件数・頻度で)、期間(いつから)の4軸で作ると漏れが出にくくなります。具体的には次のような形です。

  • 体制:「〇〇業務は現在どのような体制で進められていますか」
  • ツール:「今お使いのツールは何ですか」
  • 量:「月あたりの処理件数はおおよそどの程度ですか」
  • 期間:「そのシステムを導入されたのはいつ頃ですか」

ここで重要なのは、質問攻めの印象を与えないようにポイントを絞ることです。4軸すべてを毎回聞く必要はなく、後続の問題質問につながる軸だけを選びます。たとえば工数削減を提案するなら量と体制、運用定着を提案するなら期間とツールが優先されます。

「調べれば分かる質問」を捨てる判断基準

企業サイト、IR資料、求人票、過去の商談記録、CRM・SFAの履歴から取得できる情報は、状況質問から除外します。除外した分は「〇〇と拝見していますが、認識に相違ありませんか」という確認型に変換すると、準備量がそのまま信頼に転換されやすくなります。「資料をご覧いただいている前提でお伺いしますが」と切り出せると、会話の入り口が一段深くなります。

採用可否は「事前に調べられるか」「問題質問につながるか」の2軸で判断し、どちらも満たさない質問は削除します。実務としては、事前調査で仮説を立て、調べられない項目だけを状況質問に残し、商談冒頭で調査済み情報を共有してから質問に入る流れが安定します。

失敗しやすいのは、ヒアリングシートの項目を上から順に埋めにいくパターンです。事実確認に10分以上使うと、問題質問へ入る前に相手の集中が切れます。ただし既存顧客への追加提案では、体制変更や人事異動の確認として状況質問が再び必要になります。この場合は前回商談からの差分だけを聞けば十分です。

問題質問(P)の質問例|「お困りですか」を捨てる言い換え

問題質問で多い失敗は、営業が課題を決めつけて「〜でお困りではありませんか」と聞くことです。顧客は否定しやすく、会話がそこで止まります。「どのように対応されていますか」「特に時間がかかるのはどの工程ですか」と、対応方法や程度を聞く形に変換すると回答が出やすくなります。

決めつけ型から事実確認型への言い換え例

言い換えの原則は、課題の有無を問うのではなく、現状の運用実態を語ってもらうことです。以下は編集部が作成した対比例です。

避けたい聞き方 言い換え例 変換の考え方
教育コストが高くて困っていませんか 新任メンバーが立ち上がるまで、現状どの程度の期間を見込んでいますか 困りごとの有無ではなく期間という事実を聞く
属人化していますよね 成果の出ているやり方は、チーム内でどのように共有されていますか 断定を避け、共有方法の実態を語らせる
現状のツールに不満はありますか そのツールで手作業に戻っている工程はどこですか 抽象的な不満ではなく具体的な工程を特定する

この変換をしておくと、顧客は「否定するか同意するか」ではなく「説明する」モードに入りやすくなります。説明された内容はそのまま示唆質問の材料になるため、営業側が仮説を修正する余地も生まれます。

クローズドとオープンの使い分け

信頼関係が浅い初回商談では、まずYes/Noで答えられるクローズド質問で論点を絞り、相手が話し始めてからオープン質問で深掘りするほうが回答の質が上がるとされています。信頼がない段階でいきなりオープン質問を投げると、そっけない返答になったり本音を隠されたりしやすいためです。

実務の流れとしては、クローズド質問で論点を絞り、返ってきた答えを一度要約して返し、その上でオープン質問で程度・頻度・影響範囲を聞きます。顧客が使った言葉はそのまま記録し、後の示唆質問と解決質問で再利用します。顧客自身の言葉を借りるほど、後段の質問は誘導に見えにくくなります。

問題質問を切り上げる目安は、顧客が問題を自分の言葉で1つでも言語化したときです。逆に、言語化されないまま示唆質問へ進むと、影響を聞かれても答えようがなく会話が止まります。また、掘り下げすぎると商談の空気がネガティブに傾くため、様子を見ながら自由に答えられる質問も混ぜてください。担当者に裁量がなく「特に困っていない」と返ってくる場合は、本人ではなく現場や他部署の問題として「現場の方からはどんな声が上がりますか」と聞き直すと会話が再開することがあります。

示唆質問(I)の質問例|作れない人のための「影響5方向」フレーム

示唆質問が思いつかないのは、問題の「その先」を発想する軸を持っていないからです。編集部の設計として、影響の波及先を時間・コスト・他部署・顧客・リスクの5方向に固定すれば、問題1つから示唆質問を5本作れます。ただし示唆質問は、顧客が問題を認めた後にだけ投げるものです。

影響5方向から作る示唆質問の例

問題質問で顧客が語った内容を材料に、以下の方向へ影響を確認していきます。すべてを聞く必要はなく、自社商材が解ける方向を1〜2つ選ぶのが実務的です。

  • 時間:その対応に、月あたりどの程度の工数がかかっていますか
  • コスト:この状態が半年続くと、費用面ではどう見込まれていますか
  • 他部署・関係者:その遅れは、どの部署の業務に影響しますか
  • 顧客・取引先:その結果、お客様側にはどんな影響が出ていますか
  • リスク:担当者が交代した場合、この業務は回りますか

5方向のうち、自社が解決策を提供できない領域を深掘りしても、顧客の危機感だけが上がって提案とつながりません。商材との接続点を意識して選ぶことが、示唆質問を「効かせる」条件になります。

示唆質問と誘導質問の境界線

示唆質問は、顧客がすでに話した課題を材料に、その課題が続いた場合の影響を顧客自身の言葉で確認する質問です。これに対して誘導質問は、営業が望む結論へ相手を連れていく聞き方であり、営業側が損失や緊急度を決めつけた時点で示唆質問ではなくなります。

誘導になりやすい聞き方 中立な言い換え
このままだと売上に大きく響きますよね この状態が続くと、売上や商談数にはどのあたりに影響が出そうですか
今すぐ改善しないと危ないですよね 改善の優先度は、他の課題と比べてどの位置にありますか
上司に説明できなくなりますよね 社内で説明するとき、追加で確認が必要な点はありますか
つまり弊社のような仕組みが必要ですよね その影響を減らすには、どの条件がそろう必要がありますか

右列に共通するのは、影響の有無と程度の判断を顧客側に残している点です。その場では同意を得られても、詰問で引き出した危機感は提案フェーズで警戒に変わりやすく、結果として納得感を損なう場合があります。

顧客が沈黙・抵抗したときの切り返し

沈黙は拒否ではなく思考中のサインであることが多いため、まず数秒待ちます。質問→沈黙→傾聴のリズムを崩して営業側が言葉を重ねると、相手は考えるのをやめ、当たり障りのない回答に逃げやすくなります。

それでも会話が進まない場合は、次の三つの手を持っておくと立て直せます。

  • 仮説提示型に切り替える:「他社では〇〇の影響が出る例がありますが、御社ではいかがですか」と選択肢を渡す
  • 一般論に逃がす:「業界全体の話として伺うと」と前置きし、答えやすい抽象度に下げる
  • 問題質問に戻る:事実確認をやり直し、顧客が語れる材料を作ってから示唆質問に再挑戦する
注意点と例外

顧客がまだ現状を話していない初期段階、事実確認が不足している段階、相手が強い不安を示している段階では、示唆質問を使わず状況質問・問題質問へ戻してください。この場面で影響を突くと、納得感が損なわれます。反対に、すでに社内で問題が争点化し危機感が高い案件では、示唆質問は最小化し、検討済みの解決策や条件の確認へ切り替えるほうが商談は前に進みます。

解決質問(N)の質問例|自社が解ける範囲だけを聞く

解決質問の目的は、解決後の価値を顧客自身に語らせることです。ここで営業が説明を始めると、それまでの質問設計の効果が薄れます。また、自社が解けない領域で解決質問を投げると期待だけが上がり、提案時のギャップが失注要因になり得ます。

解決質問の例と「顧客に言わせる」聞き方

解決質問は、示唆質問で確認した影響のうち自社が解ける項目を選び、それが解消された状態を顧客に描写してもらう形で作ります。基本形は次のとおりです。

  • 「その工程が半分の時間で終わるとしたら、空いた時間は何に使えますか」
  • 「共有の仕組みがあれば、新任の立ち上がりはどう変わりそうですか」
  • 「もし〇〇が解消されたら、社内ではどう評価されますか」

三つ目の質問は、担当者が決裁権を持たない場合に有効です。回答は受注意思そのものではなく、社内稟議を通すための説得材料として扱い、決裁者への再提案機会をこの時点で設計します。誰にどの効果を説明する必要があるのかを本人に言語化してもらえば、次アクションの合意も取りやすくなります。

商品説明に入るタイミング

SPINでは4質問を終えてから商品説明に入るのが基本形です。移行の合図は、顧客が解決の価値を自分の言葉で述べたかどうかにあります。述べていない段階で機能説明を始めると、情報を自分で調べられる現在の買い手にとっては「すでに知っている内容」になりやすく、差別化になりません。

逆に、解決質問の回答をそのまま提案書の冒頭に反映すれば、提案は顧客の言葉から始まります。ここでの実務上の禁じ手は二つで、解決質問の回答を得ないまま機能説明へ移行することと、自社が解けない課題にまで解決質問を投げて後から「それは対応できない」と説明することです。

商談場面別|質問数の配分と質問セット

同じSPINでも、持ち時間から質問数を割り当てないと、時間切れか状況質問偏重になりやすくなります。時間で逆算して配分を決めるのが実務上の要点です。以下は編集部による設計例であり、効果を保証するものではありません。

  1. その商談のゴールを「受注」ではなく「次アクションの合意」など到達可能な形で定義する
  2. 場面と持ち時間を確定する(インサイドセールス15分/初回30分/訪問60分など)
  3. 持ち時間からS・P・I・Nの質問数上限を割り当てる
  4. 事前に調べられる情報を状況質問から外し、冒頭の共有事項に振り替える
  5. 商談後に顧客の発話比率と示唆質問への到達可否を振り返り、詰まった質問文を1つだけ差し替える
場面/持ち時間 質問数の目安 ゴール設定 設計上の要点
インサイドセールス(15分・非対面) S1・P2・I1・N1 次回アポの獲得 4種を無理に回さずP止まりも可
新規開拓・初回商談(30分) S2・P3・I3・N2 次アクションの合意 冒頭で調査済み情報を共有してからSへ
既存深耕・追加提案 S1(差分)・P3・I3・N2 追加課題の合意 前回からの変化点だけをSで確認
対面訪問・複数人(60分) S3・P4・I4・N2 関係者間の課題認識の統一 役割別に問題質問の対象を変える

インサイドセールス(短時間・非対面)

電話やオンラインでは相手の表情が読めないため、質問後の受け止めを必ず声に出す必要があります。「つまり、月末の集計に一番時間がかかっている、ということですね」と一文で要約してから次の質問に移るだけで、尋問の印象は下がりやすくなります。

15分で4種を回し切ろうとすると、どの質問も浅くなります。問題質問まで到達して顧客が課題を言語化した時点で、示唆質問と解決質問は次回商談に回し、「その影響について整理したうえで改めてご相談させてください」とアポにつなぐ設計のほうが成立しやすい場面もあります。

新規開拓の初回商談

初回のゴールは受注ではなく次アクションの合意です。冒頭で調査済み情報を共有し、状況質問を2問に絞れば、問題質問と示唆質問に十分な時間を残せます。示唆質問まで到達し、顧客が影響を自分の言葉で語れば、その商談は前進したと評価してよいでしょう。

既存深耕と対面訪問

既存顧客への追加提案では、状況質問は前回商談からの差分確認に限定します。体制変更や人事異動があれば、それ自体が新しい問題質問の入り口になります。一方、複数人が同席する訪問商談では、現場担当と管理職で認識している問題が異なることが多いため、問題質問の対象を役割ごとに変え、示唆質問で「その影響は、どちらの業務に先に出そうですか」と関係者間の認識差を表面化させると、提案の焦点が定まります。

ヒアリングが尋問になる原因と、会話設計での直し方

尋問化の主因は個人の話し方ではなく、ヒアリングリストを全部埋めようとする運用にあると指摘されています。項目を消化する意識が働くと、相手の回答を受け止める前に次の質問へ進み、会話が成立しなくなります。直し方は次の三点です。

  • 質問数の上限設計:場面と持ち時間から上限を決め、シートの項目は商談フェーズに合わせて絞り込む
  • 質問1つごとの要約:聞く→相手の答えを言い換えて返す→次を聞く、というリズムを崩さない
  • 質問の前置き:なぜ聞くのか、答えると相手に何の利点があるのかを一言添える

質問数については、前章の配分に従って上限を決めます。全項目を埋める必要はなく、事実と自分の仮説・所感は分けてメモを取るほうが、後の提案精度も上がります。

受け止めでは「質問1つに要約1つ」という原則が効きます。要約を挟むだけで顧客は話を聞いてもらえていると感じ、防御姿勢が緩みやすくなります。加えて、相手の話す速度やテンションに合わせるペーシングを意識すると、非対面でも親近感が生まれやすくなります。

前置きは、質問の理由が分からないことによる不安を取り除くための工夫です。「ご提案の範囲を絞りたいので伺いますが」「後ほど費用対効果を試算するために確認させてください」と、回答するメリットも含めて一言添えるだけで、同じ質問が情報提供の依頼として受け取られます。商談後の振り返りでは、顧客の発話比率と、示唆質問まで到達したかどうかの二点を確認し、詰まった質問文を一つだけ差し替えて次の商談で検証してください。

判断ポイント

尋問化を防ぐ最短の対処は、質問数の上限を先に決めることと、質問1つごとに要約を返すこと。この二つを守れば、質問文を変えなくても会話の印象は変わります。

SPINをチームの共通言語にするための評価観点

SPINが個人技で終わるのは、ヒアリングの良し悪しを評価する共通の観点がないためです。「うまく聞けていた」という感覚評価をやめ、商談ログで確認できる観点に置き換えると、ロールプレイと商談レビューが同じ基準で回り始めます。

評価観点は、成果指標ではなくプロセス指標にするのが要点です。受注率で評価すると商材要因や案件要因が混ざり、質問設計の改善につながりません。次の観点は、商談の録画や議事録から確認できる範囲に絞った編集部の設計例です。

  • 状況質問が3問以内に収まり、事前調査で分かる内容を含んでいないか
  • 顧客が問題を自分の言葉で言語化したか(営業が代弁していないか)
  • 示唆質問まで到達し、影響の波及先を顧客が語ったか
  • 解決質問の対象が、自社商材で解ける領域に限定されていたか
  • 質問ごとに要約を返し、顧客の発話量が営業を上回っていたか
  • 商談の最後に次アクションが具体的な日付付きで合意されたか

この観点でロールプレイを採点すれば、指摘が「もっと深掘りして」といった抽象論から「示唆質問の前に要約を入れる」という具体的な修正に変わります。マネージャー側も、どの段階で商談が止まりやすいかをチーム単位で把握でき、教育の優先順位を決めやすくなります。

あわせて、SPINだけでは商談は完結しない点も共有しておく必要があります。SPINは課題の言語化に強い一方、予算・決裁権・必要性・導入時期といった条件確認はBANT、購買プロセスや社内の擁護者の把握はMEDDICが担う領域です。目的が異なるため併用が前提であり、SPINで課題を言語化したうえで条件を確認する、という役割分担をチームの共通認識にしておくと、質問の抜け漏れが減ります。

よくある質問

示唆質問が思いつきません。作り方のコツはありますか

問題質問で顧客が語った内容を起点に、影響が及ぶ先を時間・コスト・他部署・顧客や取引先・リスクの5方向に当てはめてください。「その対応に月あたりどの程度の工数がかかっていますか」「その遅れはどの部署に影響しますか」のように、方向を決めれば質問文は機械的に作れます。5本すべてを聞く必要はなく、自社商材が解決できる方向を1〜2つ選ぶのが実務的です。

質問が尋問っぽいと言われます。何を直せばいいですか

直す順番は、状況質問の削減、質問ごとの要約、前置きの追加です。事前に調べられる内容を状況質問から外して2〜3問に絞り、相手の答えを一文で言い換えて返してから次の質問に移ります。そのうえで「ご提案範囲を絞りたいので伺いますが」と質問の理由を添えれば、同じ質問文でも受け取られ方が変わります。

示唆質問で顧客が黙ってしまったらどうすればよいですか

沈黙は思考中のサインでもあるため、まず数秒待ちます。それでも進まない場合は、「他社では〇〇の影響が出る例がありますが、御社ではいかがですか」と仮説を提示して選択肢を渡すか、業界一般の話として聞き直すか、問題質問に戻って事実確認をやり直します。事実確認が不足している段階での示唆質問は、いったん引くのが安全です。

インサイドセールスの短時間商談でも4種すべて使うべきですか

使い切る必要はありません。15分程度であればS1・P2・I1・N1が上限の目安で、問題質問まで到達して顧客が課題を言語化した時点で切り上げ、示唆質問と解決質問を次回商談に回す設計も有効です。非対面では表情が読めないため、質問後の要約を必ず声に出してください。

SPIN話法とBANT・MEDDICは併用できますか

目的が異なるため併用が前提です。SPINは顧客に課題を語らせて潜在ニーズを顕在化させる手法、BANTは予算・決裁権・必要性・導入時期という条件確認、MEDDICは購買プロセスや社内の擁護者まで含めた案件性の見極めに向いています。実務では、SPINで課題を言語化したうえで条件確認のフレームを重ねる流れが自然です。

まとめ

最後に、明日の商談から使える形で要点と次の一歩を整理します。

SPIN話法の成否を分けるのは質問例の暗記ではなく会話の設計です。状況質問は事前に調べられない事実だけを2〜3問に絞り、問題質問は「お困りですか」ではなく対応方法や程度を聞く形へ言い換え、示唆質問は影響5方向から自社が解ける方向を選び、解決質問は自社が解決できる範囲に限定する。この四つを守るだけで、質問の質は変わります。

次の行動としては、まず自社商材が解ける課題を1〜3つ書き出し、S2問・P3問・I3問・N2問程度の自社版リストを作ってください。そのうえで、次回商談の場面と持ち時間に応じて質問数の上限を決め、商談後に顧客の発話比率と示唆質問への到達可否を振り返り、詰まった質問文を一つだけ差し替えます。この単位で回せば、個人でも改善は進みます。

一方、チーム全体でヒアリング品質を揃える段階に入ると、質問設計をロールプレイの採点軸や商談レビューの評価観点として仕組み化する必要があります。NSJAPANでは、営業プロセスの設計から人材育成までを対象に、自社商材版の質問設計と営業組織への定着方法についてご相談いただけます。

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