GUIDE 実務ガイド

BtoBセグメンテーションのやり方|10の切り口と6ステップ実践フロー

BtoBセグメンテーションは購買目的・課題・意思決定構造を軸に、6ステップで営業リストまで落とすプロセス。リソース限定下では最小構成から検証することが成功の近道です。

読了時間:約8分
新規事業開発
著者

内藤 脩平

株式会社NSJAPAN 代表取締役CEO

株式会社NSJAPAN代表取締役CEO。伊藤忠テクノソリューションズで年間6億円規模の案件を担当し、約300社の提携ベンダーとの協業を経験。現在は、複数業界の新規事業において、事業戦略、収益設計、営業組織構築、投資判断までを一貫して担う。

経営戦略新規事業開発営業戦略組織構築
BtoBセグメンテーションのやり方|10の切り口と6ステップ実践フロー

BtoBのセグメンテーションは、BtoCで使う年齢・性別といった属性軸をそのまま使いません。代わりに、業種/企業規模/地域/成長段階/利用技術/業務課題/購買の発生契機/意思決定者/購買プロセス/支払意思の観点から市場を切り分けます。具体的な手順は「①目的定義→②切り口選定→③セグメント作成→④4R評価→⑤優先順位付け→⑥営業リスト化」の6ステップです。この記事では、この流れを埋めていくだけで営業リストと社内提案資料に落とせる状態を目指します。

つまずきやすいのは「業種と規模だけで分けて手が止まる」ケースです。BtoBでは「なぜ買うのか(購買目的・課題)」「誰が決めるのか(意思決定者)」を軸に加えないと、営業や訴求の判断が変わらず、分けた意味がなくなります。リソースが限られるスタートアップほど、全軸を使わず最小構成で1セグメントを早く検証するのが近道です。

この記事でわかること

  • BtoB固有の10の切り口と、目的別の使い分け(編集部の見解を含む)
  • 目的定義から営業リスト化までの6ステップ実践フロー
  • 4R(Rank/Realistic/Reach/Response)でセグメントを評価する考え方
  • 意思決定者が複数(DMU)のときの整理方法とICPとの違い
  • よくある失敗と、機能しなかったときの見直しポイント

BtoBとBtoCでセグメンテーションのやり方はどう違うのか

結論として、BtoCの属性軸(年齢・性別・ライフスタイル)はBtoBでは判断材料になりにくく、BtoBは「購買目的・課題・意思決定構造」を軸に据えます。BtoB市場の購買目的は売上拡大・コスト削減・品質改善などの戦略実現であり、意思決定は複数人で構成される購買組織が評価・判断するためです。

採否を決める判断基準

ある軸を採用すべきかは、「その軸で分けると、営業トークや提案内容・価格説明が変わるか」で判断します(編集部の見解)。変わらない軸は、分類しても実務の判断を変えないため優先度を下げます。BtoB事業では購買の意思決定に合理性が求められ、必要性を説明できなければ購入されにくくなります。切り口は自社都合ではなく「買う理由(ニーズ)が発生する企業群を切り出すために、どの軸が有効か」で選びます。

手順と失敗条件

  1. BtoCの属性軸をいったん外す
  2. 「なぜ買うか」「誰が決めるか」を先に置く
  3. 補助的に業種・規模を組み合わせる

失敗条件は、業種・規模だけで分類し、購買目的や意思決定者を軸に入れないことです。同じ50人規模の製造業でも、営業力を強化したい企業と既存顧客維持に悩む企業では必要な提案が異なります。

例外として、商材が業種特化で用途が固定されている場合は、業種軸の比重が実務上大きくなることがあります(自社商材の性質により変動するため、要確認)。

BtoB固有の10の切り口一覧と使い分け

結論として、BtoBは①業種②企業規模③地域④成長段階⑤利用技術⑥業務課題⑦購買の発生契機⑧意思決定者⑨購買プロセス⑩支払意思の10軸で捉え、目的に応じて2〜3軸を選びます。BtoB市場では企業属性だけでなく購買目的・利用状況・購買組織の構造まで確認する必要があるためです。

10軸の内訳と何を判断できるか

軸のグループ 含まれる切り口 判断できること
企業属性系 業種/企業規模/地域/成長段階 市場規模と接触チャネルの当たりを付ける
課題・購買系 利用技術/業務課題/発生契機/購買プロセス/支払意思 訴求メッセージと価格説明を変える根拠になる

同じ業種・規模でも、技術サポートを強く必要とする顧客とほとんど必要としない顧客では提案内容や提供体制が変わります。また、リース・サービス契約・システム購入のどれを好むかによって価格説明も変わります。

目的別の使い分け

編集部の見解として、新規開拓なら「業務課題×成長段階×発生契機」、既存深耕なら「利用技術×購買量・頻度」を軸にするのが目安です。失敗条件は全軸を並列に使い細分化しすぎることで、市場規模が小さくなり施策が回らなくなります。例外として、リソース極小のスタートアップは「業務課題×成長段階」など最小2軸から開始してかまいません。

仮想例:SaaS企業のセグメント切り分け

(※これは仮想例です。実例ではありません)「シリーズA前後・営業属人化が課題・CRM未導入」という条件を1つのセグメントに設定する。成長段階(成長段階軸)・業務課題(業務課題軸)・利用技術(利用技術軸)を組み合わせている。

狙う企業を絞る6ステップ(目的定義から営業リスト化まで)

結論として、手順は①目的定義→②切り口選定→③セグメント作成→④4R評価→⑤優先順位付け→⑥営業リスト化です。これはSTP分析のS(セグメンテーション)工程に相当し、市場を分けたうえで狙う群を選ぶ起点になります。

6ステップの成果物

  1. 目的定義(新規開拓か既存深耕か)
  2. 目的に応じ10軸から2〜3軸を選定
  3. 軸を組み合わせてセグメントを作成
  4. 4Rで各セグメントを評価
  5. スコアで優先順位付け
  6. 上位セグメントをICP化し、営業リスト・施策へ落とし込む

判断基準は、各ステップの成果物(軸/セグメント表/評価スコア/リスト)が次工程に渡せる形になっているかです。

ステップ2〜3の実務:既存データからセグメント案を作る

既存顧客・失注顧客・滞留顧客について、売上規模・業種・部門・役職・課題・ニーズを一覧化し、共通項をグループ化します。次に候補セグメントの市場規模や対象社数を外部データ(政府の企業統計、購入できる企業データベースなど)で調べて売上を概算します。自社の顧客でない見込み顧客は、企業データベースや競合製品の導入企業を参考に候補を洗い出します。可能であれば、候補セグメントへのインタビューやアンケートで、情報収集の手段・比較検討の軸・現行製品の評価を確認すると精度が上がります。

失敗条件は、分けて終わりで商品・価格・営業・販促のどれも変わらないことです。有効なセグメンテーションは社内の判断と行動を変える分類でなければなりません。例外として、リソース制約時は最小軸で1セグメントを検証し、反応を見てから拡張します。

4Rでセグメントを評価し優先順位を付ける

結論として、作成したセグメントはRank(優先順位)・Realistic(有効な規模)・Reach(到達可能性)・Response(測定可能性)で評価し、スコアで優先度を決めます。

評価表の作り方

4Rの観点 見るポイント
Rank(優先順位) 商品・サービスとのマッチ度合いでランク付けする
Realistic(有効な規模) 売上・利益を確保できる十分な規模・購買力があるか
Reach(到達可能性) そのセグメントに届くチャネル・手段を持っているか
Response(測定可能性) 反応をコンバージョンや訪問数などで測定できるか

手順は、評価表の列に4R、行にセグメントを置き、各セルを3段階などで採点して合計で並べ替え、上位1〜2件を優先セグメントに確定します。規模が小さすぎる、または接点を持てないセグメントは上位から外すのが目安です。

失敗条件と例外

失敗条件は、都合の良いセグメントに評価を寄せることと、精緻さを追求しすぎて動けなくなることです。特に細分化しすぎると市場規模が小さくなり、ターゲット市場としての意味をなさなくなります。例外として、資料によってはRealistic/Reachable/Responsive/Relevantと表現が異なる場合があります。呼称ではなく評価観点で統一してください。

意思決定者が複数(DMU)の場合の整理とICPとの違い

結論として、BtoBは単一窓口ではなく購買組織(DMU)で判断が下るため、優先セグメントを決めたらDMUマップで関与者と役割を整理し、ICPとして具体化します。DMU(Decision Making Unit)は購入意思決定に関わる複数の関与者を総体として理解する概念です。

DMU整理の手順

  1. 優先セグメントを選ぶ
  2. DMUマップで関与者(窓口担当・その上司・連携部署・決裁者)と決裁権限を整理する
  3. 役割別に伝える価値を設計する
  4. ICP(狙う理想企業像)として文書化する

DMUマップでは、まず顧客窓口部門のライン(担当者とその上司)を置き、次に窓口部署と連携が深い部署(開発と設計、企画とマーケティングなど)を加え、決裁権限を縦軸にして関与レベルを配置すると整理しやすくなります。失敗条件は、窓口担当だけを見て決裁者・連携部署を見落とすことです。DMUマップ作成演習では「思ったより自分の担当顧客のことを知らなかった」という気づきが多いとされます。例外として、経営者が直接決裁する小規模企業ではDMUが単純化し、マップは最小構成でかまいません。

セグメンテーションとICP・ターゲティングの関係

セグメンテーションは市場を分ける工程、ターゲティングはその中から狙う群を選ぶ工程です。ICPは、選んだ群を企業属性・DMUまで具体化した設計図と位置づけると整理しやすくなります(編集部の見解)。

営業リスト化とMA/CRM連携で運用に落とす

結論として、優先セグメントとICPを営業リストに変換し、MA・CRMで行動データと連携させて配信・スコアリング・営業連携を回します。「フォーム入力→セグメント分類→メール配信→スコア判定→営業連携→効果測定」という一連の流れを自動化できるのが連携の要点です。

運用手順

  1. ICP条件で企業リストを抽出する
  2. MA/CRMに登録し、選定した軸で分類する
  3. セグメント別に配信・スコアリングする
  4. 閾値を超えたリードを営業に引き渡す
  5. 反応を測定し、セグメントや軸を見直す

MAとSFA/CRMを同期すると、「一度失注している顧客」と「新規の顧客」で送るメール内容を簡単に変えられるなど、営業フェーズに応じたナーチャリングが実現します。

失敗条件と例外

失敗条件は、どの部門がどのデータを管理するかの運用ルールが曖昧で、更新漏れや情報の重複が起きることです。リード情報を登録する部門と活用する部門、CRM/SFAへ引き継ぐタイミングを事前に決めておく必要があります。例外として、ツール未導入の初期段階は、スプレッドシートで最小構成のリストと反応記録から始めてかまいません。

見直し(PDCA)の判断ポイント

Response(測定可能性)の指標をもとに反応を測り、セグメントや軸を修正します。収集したデータでPDCAサイクルを回すことが改善につながります。作って終わりにしないことが重要です。

よくある質問

BtoBとBtoCでセグメンテーションのやり方はどう違うのか

BtoCが年齢・性別・ライフスタイルなどの属性軸を中心に使うのに対し、BtoBは購買目的・課題・意思決定構造を軸に据えます。BtoBの購買は複数人からなる購買組織が合理性を求めて判断するため、属性だけでは「なぜ・誰が買うか」がわからないためです。

小規模・スタートアップでもセグメンテーションは必要か

必要です。限られた経営資源を成果の出やすい層に集中させるための工程だからです。全軸を使わず「業務課題×成長段階」など最小構成から始めるのが現実的です。

業種や企業規模だけで分けてもよいか

不十分です。同じ業種・規模でも購買目的や意思決定者が違えば、必要な提案や訴求が変わります。「予算が潤沢だから大企業」といった自社都合の分類は戦略に役立ちにくいとされています。

意思決定者が複数(DMU)のときはどう考えるか

セグメント内でDMUマップを作り、窓口担当・上司・連携部署・決裁者の役割を可視化して、役割別に伝える価値を設計します。

ICPとセグメンテーションは何が違うのか

セグメンテーションは市場を切り分ける工程、ICPは選んだ優先セグメントを企業像として具体化したものです。ターゲティング(狙う群の選定)の後段に位置づく整理として捉えると混乱しにくくなります。

細分化はどこまで進めるべきか

市場規模が小さくなりすぎると施策が成立しないため、Realistic(有効な規模)で歯止めをかけます。反応を見ながら段階的に絞るのが安全です。

まとめ

BtoBセグメンテーションは、BtoCの属性軸を外し、購買目的・課題・意思決定構造を含むBtoB固有の10軸で分け、4Rで評価して優先順位を付け、DMU・ICPを経て営業リストとMA/CRM運用まで一気通貫で落とすことが要点です。リソースが限られるほど、最小構成で1セグメントを早く検証し、反応を見て拡張する進め方が成果への近道になります。次の行動として、まず目的(新規開拓か既存深耕か)を定義し、10軸から2〜3軸を選んで評価表を1枚作ってください。

一方で、6ステップを理解しても、データ取得・MA/CRM連携・少人数での検証設計でつまずきやすいのが実務です。株式会社サードフェーズへの支援では、ターゲットの再定義とCRM運用設計により、BDR担当0名から初月アポイント15件、有効商談率20%(支援1週目)から60%(2ヶ月目)、初月MRR240万円に到達しました。成果は支援開始から60日時点のもので、既存のリード資産・商材・ターゲット市場によって変動します。少人数チームでの立ち上げに不安がある場合は、NSJAPANの無料個別相談で自社のセグメント設計とボトルネックを整理できます。

本記事は、既存顧客データの一覧化やインタビューを通じてセグメント候補を洗い出す方法を前提に手順を設計しています。数値・実績はサードフェーズ社の公開事例を一次情報として引用し、フレームワークの使い分けや優先順位の考え方は編集部の見解として区別しています。

参考情報・出典

関連する実務ガイド

関連する支援事例

著者プロフィール

メンバー一覧へ
内藤 脩平 著者 内藤 脩平 株式会社NSJAPAN 代表取締役CEO

株式会社NSJAPAN代表取締役CEO。伊藤忠テクノソリューションズで年間6億円規模の案件を担当し、約300社の提携ベンダーとの協業を経験。現在は、複数業界の新規事業において、事業戦略、収益設計、営業組織構築、投資判断までを一貫して担う。

事業と営業の課題を、一緒に整理しませんか。

無料相談を申し込む